晴れた日も、雨の日もわたしは部屋の観葉樹(シナモン)の深いグリーンの艶のある葉色が好きで、一日何回もそばで眺めて心癒されている。
わたしはこの樹には特別の思いがある。
春にここに越してきて荷物の片付けが済んだ後、部屋に観葉樹を一鉢置きたいと思い、近くに住む息子に話したら、家からだいぶ離れた花や植木を扱う大型店に連れていってくれた。
店内には沢山の種類があり,なににしようか悩んだが、濃いグリーンの葉色、葉の大きさ、植木の高さや形などからシナモンの樹が気に入った。けれど自分が考えていた予算をオーバーした値段だったので樹の前で悩んだ末息子に「今日は買わずに少し考える」と言って帰ってきた。
その夜やっぱり買おうと決め、息子の都合のいい時また連れて行ってもらおうと思っていた。
翌朝家事で忙しくしていて何気なく窓越しに外をみると向こうの方から大きな鉢植えを重そうに抱えた人がこちらに来るのに気が付きよく見ると息子だった。
息子は昨日わたしが欲しくて悩んで買わずにきたシナモンを、買ってきてくれたのである。しかも背の高い樹なので自分の車に乗らないため店の車を借りてきたという。
部屋に置くとお店で見たときより立派な樹に見えて素敵に部屋の雰囲気を醸し出してくれた。息子は喜ぶわたしにただ頷いて代金は受け取らず、車をかえしてくると忙しそうに出ていった。
たしかあの日は少し雨も降っていた。その中を大きな体の息子が背中を丸くし運んできてくれた姿が頭から離れない。
わたしはこの観葉樹には息子の優しさが凝縮されているような気がして、大切に育てたいと強く思っている。
コメント