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心温るお孫さんの話  

以前膝の怪我をして入院した時同室だった友人から久しぶりに電話が入った。

わたしの再度の入院に驚いて見舞いの言葉をかけてくれた後「古家さん孫の話しをしていいかしら」といわれた。

わたしはいつもベッドの上で変わり映えのしない日々なので喜んで「な〜に聞かせて」と弾んだ声を返した。友人は次のような話をしてくれた。  

それは同じ屋敷に住んでいる息子さんのボーナスの日のことだった。息子さんには三人の男の子がいてそれぞれに「お父さんボーナスもらったから好きなものを買いなさい」と千円づつわたした。子供達は両手あげて「ばんざい!」と大喜びだった。  翌日小学4年生の一番上のお孫さんがきて「おばあちゃん、いつもお世話になっているから、なにか買ってあげるからセブンイレブンに一緒に行こう」と言ってきた。セブンイレブンはすぐ近くなので友人はよろこん孫と一緒に店にいった。  孫が自分の欲しいものをあれこれ選んでいる様子を見ながら友人は自分は何を買ってもらおうかと考えて150円のアイスクリームにきめたていた。自分の買い物が済んだ孫が「おばあちゃん!何がいいの」と元気よく聞かれ友人も張り切って「アイスクリーム」と答え150円のアイスを指さした。

ところがである。

お孫さんの手には110円しかない。どうしても欲しいカード3まいを買ったらこれだけしか残らなかったという。 友人は「ああ、そうなんだ…おばあちゃんはこのアイスが欲しかったからあきらめるよ…」と言って二人ですごすごとと家に帰った。 家で二番目のお孫さんが待っていた。おばあちゃんは手に何ももっておらず少し様子もおかしいとおもったらしい。お兄ちゃんがお金が足りなくて買えなかったことを話した。  すると弟が「じゃあ僕が買ってあげるからおばあちゃんもう一度行こう」という。 友人は足も痛いので「いいよ、いいよ」と言ったが聞かないので、仕方なくついて行った。だが弟もお兄ちゃんの買ったカードがどうしてもうほしくて買ってしまい110円しかのこらずおばあちゃんのアイスは買えなかった。二人で肩を落としてもどった。  二人の孫はきまりわるそうに「おばあちゃん、ごめんなさい」と頭をざげて帰って行った。

 話を聞いて友人と笑い合いながら、「なんて可愛いお孫さん!」とわたしは口にせずににいられなかった。胸が熱くなった。  電話をきって考えた。わたしだったらお孫さんが手にしている110円に足りない分は「おばあちゃんがだすから」と40円出してアイスクリームを買ったかなもしれない。或いは110円で買える品物に変更することもあるだろう。

 はたしてどちらが孫のためになるだろうか。

わたしのようなやり方ではお孫さんの心にほとんどなにも残らず今日のことは通過してしまうだろう。 友人のようにじっと我慢をしてお孫さん達に苦い思いをさせたならばこの日のことが心に残り、次は約束は守らなければならない。その為にお金の使い方も考えなければならない。あの後味の悪さもも身に染みたことだろう。  しっかり者の友人らしい対応に頭が下がった。

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84歳のおばあちゃんです。
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